残骸

映えない人生

戦いは続く

 

職場であたたかい飲み物を飲みたい

 

そう思った私はマグカップを職場に置いておこうと考えたが、自分の注意散漫さを思い出す。今まで倒したコップの数は知れず。そう思い、マグカップではなくタンブラーにしようと思い立った。

 

私は元々スタバに良い印象を持っていない。

それはやはり言いたくはないが、根本、自分が田舎者だからなのだろう。散々言われている事だが、あのサイズ表記。カッコつけるんじゃないここは日本だぞ、と言いたくなる。

 

文句はあるが、つい利用してしまう。そうしてスタバに屈してしまう自分にやるせなさを感じつつも、今回もタンブラーを購入。

 

スタバのタンブラーを買うと、次回千円分の飲み物がタダになる券をもらえる。私はこれを財布にしまい、絶対忘れる自信があったので早々と使おうと心に誓った。

 

 

職場に着いて、軽く洗ってから あたたかい飲み物を飲めることのうれしさを噛みしめながらお湯をわかす。そして紀伊國屋で買ったルイボスティーをいれた。(紀伊國屋というところに実家暮らしの余裕を感じる)

 

 

 

素晴らしい。

夏とはいえ、冷房が効いた部屋で飲むあたたかい飲み物は最高。どうしてもっと早くタンブラーを買わなかったのか。冬はもっと重宝するぞ…などと思いながら昼下がりのティータイムを楽しんでいた。しかし、お湯を熱くしすぎてしまってなかなか思うように飲めない。

 

 

そうだ、とりあえずこの蓋を取って少しでも冷ましておこう。

 

 

 

私は蓋を外したタンブラーを置いたままお昼休みを過ごした。私のお昼休みの過ごし方は、スマホをいじっているか寝るかのどちらかである。この日はギリギリまで寝てやろうと思い、ブランケットに包まりながら眠っていた。

 

 

不思議なもので、「この時間に起きる」と決めたら大体その時間にきちんと起きられる。これは私の特技かもしれない。

寝ている間にお茶はいい感じに冷えたかなと思い、タンブラーを目の前に置く。よし、歯を磨こう。私は歯ブラシセットに手をかけようとし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タンブラーを、倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒した時に被害が少ない事を想定してタンブラーにしたのだが、よりにもよって「蓋を取った状態」の「あたたかいお茶」が「並々入った」タンブラーを倒した。こんな悪条件が重なることってあるか?と思った。人は本当のピンチになると固まる。あたたかいお茶が膝にかかった。熱い、という感覚を私の脳が認識するまでに少しの時間を要した。ギリギリまで寝てしまったのでパニックになりながら浸水した受付の棚と床、自分の脚を拭く。

 

私のいる受付の棚は木製なので、この日ルイボスティーをふんだんに吸っただろう。横に置いてあった領収書はまだ1ページしか使っていない状態であったが、完全水没させた。

 

しかしそんな飲み物ぶちまけ事件にも私は負けない。そのあと懲りずにまたいれなおして飲んだ。被害が自分にだけであれば、少しの失敗など気にしない。

 

 

そんな事もあったが、やはりタンブラーのある職場は最高だった。そして今日、忘れないようにあの千円分の券を使おうとスタバに向かった。

 

 

これはスタバに限ったことではないが、

ああいったカフェの注文はどうしてもハラハラする。何故かというと、私は目が悪いためメニュー表が近くまでいかないと全く見えない。しかし自分の順番が来ると「どうぞ(^^)」と店員さんの目の前に通される。その瞬間から私の焦りは始まる。後ろの人が並ぼうものならその焦りは最高潮。「早く決めなければ」その事しか頭にない。正直この焦りでテキトーに注文してしまうことが多々あるほどだ。

 

今回、スタバでもそのような状況になってしまった。

 

 

甘くないのが飲みたいがせっかく千円分の券で普通のコーヒーだと少し損な気がする……などと考えてしまう自分と、「早く!早く!」と急かしてくる自分。もうこうなると私の判断力は鈍る。

 

そしてついに「あんまり甘くないのどれですか…」と店員さんに聞くという、最終手段に出た。最終手段といえど、これが一番手っ取り早いと思う。私のスタバ経験値を露呈することになるので、恥ずかしくもあるがここは仕方ない。

 

店員さんは若いオネーチャンだった。

 

 

そしてこのオネーチャン、次に信じられない事を口にするのである。

 

 

 

 

 

 

「ん〜〜、キャラメルマキアートとか実はそんなに甘くないですよ(^^)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラメルマキアートが甘くないなんてことあるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやキャラメルマキアートが甘くないなんてことあるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラメルとは牛乳や砂糖を煮詰めて作るキャラメルのことでよろしいか?私の世界のキャラメルはどう考えても甘いんだがもしやこのオネーチャンは地球ではない所にお住まいか?私の知らないキャラメルが存在している??

 

 

 

 

 

 

私の脳内は困惑した。

しかし、おすすめを自ら聞いて勧められた手前、私はそれ以外を頼むことはできない。

「ほぉ〜〜んじゃあソイラテで!」と言える強さは、私にはない。

 

とはいえ、先ほども言った通り私のスタバ経験値はとてつもなく低い。実際キャラメルマキアートがどんな味だったかも想像がついていなかった。上に乗っかってるホイップとキャラメルが甘いだけで、飲み物自体はそうでもなかったかもしれない。そうでなければ「あまり甘くないやつで」とリクエストをしている奴に勧めないだろう。

 

私はオネーチャンを信じることにした。

信じて、キャラメルマキアートを飲むことにした。

 

タンブラーについている券なのだから、持ってきたタンブラーに入れる方式なのかと思いきや、「カップに入れるので必要だったら移し替えてください(⌒-⌒; )」と言われた。恥ずかしい。また少しスタバが嫌いになった。

 

更に「このままのお渡しでよろしいですか?」と聞かれ、私は思わず ハ、ハイ と答えてしまう。なんとなく、1つだけで袋に入れてくださいとは言いづらかった。しかし外はゴリゴリの夏日。ただでさえ暑いというのに、私は熱いキャラメルマキアートを持ったままお昼を買いに行く羽目になった。完全に買う順番を間違えている上に熱い。全然このままのお渡しでよろしくなかった。

 

 

様々な疑いや後悔、羞恥心までも渦巻いた買い物であった。スタバは恐ろしい。まあ私は少しの失敗など気にしない。

 

 

 

職場につき、さてさて…と腰を下ろし、オネーチャンの勧めてくれたキャラメルマキアートを一口すすった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まごうことなき、甘み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホイップの上にかかったキャラメルソース、その下のキャラメル味の飲み物 全てが甘い。どこを取っても甘い。

 

逆にこれ、甘くない要素、ある?

 

 

大丈夫か?あのオネーチャンは、味覚がバグっているのか?もしやミネラルウォーターの代わりに砂糖水がぶ飲みしてるタイプ??

 

 

しかも千円まで無料券だったのでいつもより大きいサイズにしてしまった。なんて呼ぶのかは忘れたが一番大きいサイズより一個下のサイズ。このべらぼうに甘い飲み物を、「あんまり甘くないやつで」とオーダーしている奴が飲み切れるわけもなく、少し残した。

 

私はまた少し、スタバが嫌いになった。